吸収線量と線量測定
投稿日:2021年09月29日最終更新日:2021年11月11日
吸収線量の考え方と線量測定について説明します。
吸収線量とは?
電子線照射の重要なパラメータとして加速電圧と吸収線量があり、利用用途に応じて決定します。ここでは線量について説明します。
放射線照射により単位質量当たりに物質の得たエネルギー量を線量(dose)と呼んでおり、物質が吸収する量を吸収線量といいます。(電子線での線量とは吸収線量を指します。)
吸収線量は、被照射物への影響の程度を表し、線量が大きいほど被照射物へ大きな影響を与えることになります。この吸収線量は単位質量当たりのエネルギー付与量であり、Gy(グレイ:SI単位)が用いられ、1Gy=1J/kgで表すことができます。また、一般的に吸収線量はkGyの単位で使用されます。
単位時間あたりの吸収線量は、線量率と呼ばれます。線量率については別の記事にて紹介します。
電子流と搬送速度の関係
図1に電子線照射の概略図を示します。線量を考える上で重要なパラメータとなるのは電子流と被照射物の搬送速度および照射幅になります。これらの関係性については(式1)に示す計算式で表すことができます。
K は装置固有の定数を示し、線量は電子流値に比例、搬送速度と照射幅に反比例します。照射に必要な線量と処理速度が分かれば必要な電子流値が分かり装置の仕様選定に役立てることができます。
D | :吸収線量(kGy) |
I | :電子流 (mA) |
V | :搬送速度(m/min) |
W | :処理幅 (cm) |
K | :装置固有定数 |
図1 電子線照射概略図
線量測定方法について
線量測定は照射製品の開発や品質管理を目的に実施されます。ここでは当社で一般的に使用しているCTA線量計を用いた線量測定について説明します。CTA線量計は無色透明のフィルムで電子線加工処理の線量領域の測定に用いることができる線量計です。測定原理としては吸光度が電子線照射により直線的に増加することに基づいており、分光光度計または専用測定器を用いて吸光度を測定し、線量を求めます。
図2はCTA線量計を用いた線量測定の実測結果を示します。100kGy以上では直線関係から外れるので、それ以下で使用するのが望ましいとしています。
また、CTA線量計は、照射後の時間経過によって吸光度がゆっくり上昇していく傾向がありますが、その速度は次第に緩やかになります。ただし、照射直後の10分から20分の間は早い下降を示すことから、照射2時間後に測定するのが望ましいとしています。
さいごに
電子線照射において、吸収線量は重要なパラメータの一つになります。
本記事では、吸収線量とは単位質量当たりのエネルギー付与量であり、電子流値に比例、搬送速度と照射幅に反比例することを説明しました。また、線量測定の一例としてCTA線量計について紹介しました。他にも様々な線量計がありますが、それぞれの特徴を理解し正しい環境下で測定することが重要になります。
(藤田記)
参考文献
田中隆一 他:「CTA線量計マニュアル」JAERI-M 82-033 (1982)
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