電子線照射お役立ち情報

電子線照射装置に関する適用法令

投稿日:2022年06月17日最終更新日:2022年06月17日

電子線照射装置は、その名の通り電子線を発生させます。電子線は放射線に該当しますので、取り扱いについて十分注意が必要となり、エネルギーに応じて法令が関わってきます。
また、大気に電子線が照射されることで人体に有害なオゾンが生じたり、装置の電源タンクには絶縁を保つため、温室効果ガスであるSF₆ガスを使用したりしています。
ここではこれらに関する日本国内での法規制や取り扱いについて紹介します。

電子線照射装置の取り扱いに関する法規制

放射線は高い運動エネルギーをもって流れる物質粒子と高エネルギーの電磁波の総称をいいます。電子線は電離放射線に分類されることから、電子線照射装置は放射線同位元素等の規制に関する法律(以下、RI法)および電離放射線障害防止規則にて取り扱いが定められています。規制内容を表1に示します。原子力基本法第三条第五号や核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する政令の第四条などで放射線として定義される電子線は’’1MeV以上のエネルギーを有する電子線‘’と定められており、装置のもつエネルギーが1MeVを境に適用される法令が異なります。
1MeV未満の装置を稼働するためには、労働基準監督署への設置届の提出が必要となります。一方1MeV以上の装置であれば、RI法の適用対象になるため、使用許可申請書などの各種必要書類の提出や第一種放射線取扱主任者の常駐が必要となります。

放射線関連法規制
表1.電子線照射装置における放射線関連法規制

 

装置のもつエネルギーに関わらず、作業従事者の6ヵ月ごとの特殊健康診断や、被ばく線量管理、そして作業環境測定は必要です。放射線の被ばく線量はSv(シーベルト)の単位で表され、管理値が表2のように各区分で定められています。区分の概略図を図1に示します。

法令による放射線管理値当社の遮蔽仕様値
    表2.法令による放射線管理値と当社の遮蔽仕様値

 

規制値境界
図1.規制値境界概略図

 

当社の装置の仕様値は1.8μSv/hrとしております。これは管理区域境界管理値である1.3mSv/3ヶ月を
3ヶ月間の労働時間最大720時間として算出した数値で、法令より厳しい値となっています。

SF6ガスの取り扱い

電子線照射装置において、高電圧を発生させる電源タンク内は、絶縁を確保するためSF6ガスを使用しています。SF6ガスは人体に無害で非常に優れた絶縁性能を有する一方、温室効果ガスの一つであるため、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)にて大気への排出が規制されています。
メンテナンスを実施する際、電源タンクからSF6ガスを回収、再充填する必要がありますがその際のガス排出量を減らすため下記設備を用いて実施しています。(図2に構成イメージを示します。)

① SF6ガス充排気装置
タンク(圧力容器)内にSF6ガスを充填、タンクからガスを回収する際に使用する装置です。
② ストレージタンク
電源タンク内をメンテナンスする際等に、一時的に電源タンク内のガスを保管する装置です。
③ ブースターポンプ
ブースターポンプは、SF6ガス回収時の回収能力を増強させる補助真空排気システムです。
電源タンク内の残圧をより小さくできるため、残存SF6ガス量を少なくでき電源タンク開放時の排出量を低減できます。

SF6ガス充填、回収イメージ
図2.  SF6ガス充填、回収イメージ

オゾンの取り扱い

大気中の酸素に電子線が照射されるとオゾンが生成されます。低濃度のオゾンであれば人体に影響を与えることはありませんが、高濃度のオゾンは眼や鼻腔、喉を刺激するなど悪影響を及ぼすことがあります。そのため日本産業衛生学会にて、勧告として作業環境での許容濃度を0.1ppm以下と定められています。また金属や樹脂に対しても腐食や劣化といった悪影響を与えます。
大気中で電子線照射する場合、照射室内は高濃度のオゾンに満たされることになるため、当社では下記のいずれかの対策を実施することで、影響のないレベルでの作業環境を実現しています。

① 不活性ガス中での照射
照射雰囲気にN2を用いて、照射時の酸素濃度を減らすことでオゾンの発生を抑制する。
② オゾン処理装置による処理
照射室内のオゾンを、活性炭を用いてCO2とO2に分解し排出する。
③ 煙突を用いて高い位置から排出
大気拡散により人体に影響のある地表付近における濃度を薄める。

当社の装置の照射室内はブロワで常に排気しており、装置停止後、照射室内に人が立ち入る際には計算上でオゾン濃度が0.1ppm以下になる時間まで入室できないように管理しております。

まとめ

電子線照射装置の利用には、放射線、オゾン、SF6などを慎重に取り扱う必要があります。当社ではこれらを安全なレベルで安定して扱うことができるように設計、製作をしておりますので、安心してご利用いただけます。

(藤田記)


[本件に関するお問い合わせ]
株式会社NHVコーポレーション EB加工部
TEL:075-864-8815
こちらのフォームよりお問い合わせください。

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