放射線と電子線
放射線の一種である電子線は、β線と同じものです。β線は原子の壊変から発生しますが、電子線は装置により発生を制御することで安全に利用することができる放射線です。
電子線の利用~放射線(電子線)架橋技術~
樹脂やプラスチックなどの高分子に放射線を照射すると、高分子の一部が壊れて、他の高分子と結合しやすい部分が生じます。
この部分が互いにくっつき結合することにより、網目状の構造ができます。この化学反応を放射線(電子線)架橋技術と呼びます。
1950年代に放射線架橋技術が発見されて以来、特に放射線の一種である電子線による架橋が、その安全性や生産性の高さから、プラスチックやゴムの耐熱性向上や形状記憶性(熱収縮性)の付与などに長年利用されています。
(電子線架橋の詳しい解説はこちらをご覧ください。)
生分解性放射線(電子線)実験樹脂
電子線架橋技術を応用して、生分解性樹脂ポリカプロラクトン(PCL)に形状記憶性(熱収縮性)をもたせた実験用樹脂です。ここでいう形状記憶性とは熱により変形した樹脂が、再び熱を加えることで元に戻る性質のことです。
この性質により、電子線架橋の効果を簡単に体感することができます。
この製品は国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)の技術を利用して、製品化しました。
照射の様子
ポリカプロラクトン(PCL)を電子線架橋するための電子線照射は、PCLのシートをトレイにセットして行われます。
動画の中央の大きな台がトレイでその上にある白いシートがPCLです。
電子線はシャワーのように照射されますので、トレイを洗車機のように通過させることでPCLに照射されます。
PCLに電子線が当たると、架橋が起こりますが、同時に余剰のエネルギーにより発光しています。
電子線照射の利用とSDGs
この形状記憶性(熱収縮性)の付与の技術は食品包装フィルムの製造に利用され、食品保存期間の延長、さらには食品ロス削減につながります。
このように電子線は身近で、そして様々な場面でSDGsの達成を支援しています。
(詳しくはこちらをご覧ください)